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栃木県宇都宮市の空間プロデューサーの日々報告
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2009.04.18 大谷資料館

おのおのが提供できるプロフェッショナルの能力を
おのおのが最大限発揮し
それが本物の空間の力によって融合する。
何かが欠けても何かを足しても崩れてしまうある種のバランス。
それらが絶妙な関係性を自発的に形成する。
それは皆がひとつの目的に向かって考え、動いているから。

そうしてしか成し得ない、得も言われぬ居心地の良さ。
その瞬間瞬間に様々な出来事が即興的に解決される為、
そこに居る人々は違和感なく心地よくその場を体験できる。
直接体感しないと分からない感動。
言葉や写真では決して伝わらない体験。

それが最高に贅沢な時間。
それが最高に幸せな空間。


special thanks...
大谷資料館
小田島建夫氏
向日葵
クウチャリズモ+マルゴ
饗茶庵+日光珈琲
タムラサトル氏
小川倫生氏
近藤歩さん
野の花 にこぐさ
スタジオオオハシ
暮らし家
狭山ケ丘 nico
明月苑
taro-cobo
all of our familiy and friends...

こういう本物の力を持った方々と
一緒に何かを創出することが何よりも楽しい と
じみじみと感じる今日この頃。

一人では何もできない。
でも
一人で何かができないといけない。
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以前紹介した築60年程のこの建物

この度、手打ち蕎麦と精進料理のお店として
2009年2月28日吉日、
開店の運びとなりました。

工事も無事完了し、検査を行い、
お客様にお引渡しをするのはとても嬉しい瞬間ですが
同時に自分の手を離れて行く我が子を思うようで
なんとも切ない感情が同居します。

なのでカメラマンさんにお願いし、
記念撮影をしてもらいました。
日本家屋は陰影が命。
素人では敵いません。

窓台は健在で、簾が下がりました。

さて、内部は、、、
 
客間です。

「迎えの間」と「レストルーム」
 
看板を含め、
まだまだ新規部分が若いのですが
本物の素材を使っています。
じっくり、時間をかけて味を出して欲しいです。

さて、
お客様のご好意により、
開店に先立って夕食を頂いてきました。
実は設計に先立ち、昨年秋口にご自宅にお邪魔し、
ひと通り頂いたことはあったのですが、、、

すごい。。。
なんというか、
以前京都に行った時に訪れた「The Garden Oriental Kyoto」、
その時の感覚が蘇りました。

使い手と空間の濃密な絡み。
つまり
料理とサービスと空間の一体感。
それでいて
居心地の良さ。心地よい温度感。

このオーナーさんだからこの空間。
この料理だからこの空間。
空間だけではダメ。
料理だけではダメ。
サービスだけではダメ。
ものすごいバランスの良さ。。。
ひとり静かに悦に入ってしまっていました。。。

これは写真では伝わらない悦びです。
是非、体験して下さい。


そのお店の名前は「恵風」。
予約のみの営業となります。
駐車場はありません。
2009年1月号の「もんみや」に!
今年度発足した<[LED] 栃木住環境デザイン機構>の広告を掲載してしまいました。
人生、初広告です(有料では)。

129ページの「住むトコ不動産」(ここも僕の連載ですが。。。)にセルフ便乗してます。

[LED] 栃木住環境デザイン機構」は、
<中古住宅+リノベーション>の住まいづくりを総合的にかつ創造的にできる団体です。
不動産・建築設計監理・施工はもちろん、ライフプランやローン、相続、権利、税務などなど、「住まいづくり」に不可欠な要素を各プロフェッショナルがサポートしています。
わずらわしいトコはプロに任せて、楽しく「自分らしい住まいづくり」に労力を集中して「自分だけの家」を手に入れて欲しい。そんなです。
たまには、本業のコトも。

今、蕎麦店の改装の仕事が工事に入ってます。
コチラの案件、METで紹介をしていた
築60年程のこの建物

窓台のついた、上品な町型古民家です。
METコラムにて経過報告をしてます。
僕とふじぽんさんで細々と続けているMET -栃木物件案内-
その派生事項である、「住むトコ不動産」(タウン情報誌もんみやにて連載)が2008年10月号で12回目を迎えました。

METで紹介している変な物件。
その中から1件/月をピックアップ。
そしてゲストとして、県内のオピニオンリーダーというか、
何かをうみだしている人、クリエーターというか。
そしてこういう変な物件が好きそうな人。
なによりも僕が面白いな、話したいな、と思った人。
そんな方々をゲストに招き、実際に物件に行って対談してます。

誌面に載る対談文面はページの都合上、あの程度なのですが
実際はA4でみっちり6枚以上は平均で話しています。
泣く泣く編集でカットしているんです。
ページの性格上、物件の要素(特に外見)から1次的に想像できるコトに絞りに絞って掲載していますが、
なにせ雑談なので、2次、3次とどんどん話が派生してしまうんです。
盛り上がると、もう異次元です。
何がこの物件と関係ある話なのか、自分達も見失っています。
こうなるともはや読んでも伝わらない。
でも実は一番面白い内容だったりします。
あくまでその物件に触発された思考なのは確かなんです。
あくまでその物件に行って話さないと出てこない思考なのです。

直近の10月号(ゲスト:ギタリストの小川倫生さん)との対談では
ちょいとその片鱗が出ちゃってます。あれでも「ほんのちょいと」程度。

更に、その号から内容がマイナーチェンジされました。
「ふじぽん検索」と「愛でたいもの」。
「ふじぽん検索」は、ICT・webコンサルのふじぽんさんらしく、
物件から派生する、情報を仕入れるコツをちらりと紹介。
「愛でたいもの」は、僕のコーナーなのですが、
物件の内外部もしくは周辺に存在する、<路上観察物件>をご紹介。
もはや完全に趣味です。すいません。
いや、謝りません。

ともあれ12回目を迎えて、連載はどうやら続く様です。
もちろん自体もまだまだ続きます。
実際に紹介物件に住み始めた人も増えてきました。
解体の憂き目にあってしまった物件もあります(これは悲しい。。。)

建物は使われないと意味がないのは確かですが、
使われていない建物に価値がない訳ではありません。
個人的に、人に関して「全部が好き」ってことはないと思っています。
すごく魅力的な部分とか、これは許せない部分とか、
そういった多種異種要素が合わさっていち個人です。
それでそれなりにバランスが取れて生きてけてると思うんです。
建物も同じ気がしてます。
一つでも自分にとって強烈に魅力的なトコがあれば、
例え万人が好きなモノでなくても付合う価値がある。
そんな風に思ってます。
小学校からの腐れ縁の友人の結婚式に那須の二期倶楽部に行って来ました。

腐れ縁ついでに、この友人も大学では建築学科に進み、宇都宮に戻って設計事務所に勤めています。
そして嫁さんも大学で建築学科の大学院を卒業しています。
だからというかなんというか、ここで挙式という選択になったのでしょう。
結婚式〜披露宴は真新しい<観季館>で行われました。

二期倶楽部は、以下のそうそうたる建築家/デザイナーによって設計されています。
メインビル:渡辺明、パビリオン:コンラン&パートナーズ、観季館:佐藤一郎(エイジ)

渡辺明氏は竹中工務店出身で、この二期倶楽部シリーズで数々の建築賞を受賞。
どっしりとしたモダンデザインの住宅建築のイメージがあります。
そういえば、学生の時に手伝っていた設計事務所のオフィスが
氏の設計した高級マンションでした。当時は上の階にキムタクが住んでいたようです。

コンラン&パートナーズの代表、サー・テレンス・コンランはロンドンを拠点に
世界中にその活動の幅を拡大し続けるライフスタイルデザイナー。
インテリアデザインだけでなく、家具、都市計画、飲食店を含め展開。
デザインが生活に潤いを与える、的なデザイン企業です。
ロンドンにはHABITATという超高級インテリアショップがあったのですが、
超貧乏学生の僕はとてもじゃないけど入れませんでした。。。
日本では新宿パークタワーに店舗が出来て以来、関連ショップ/レストランが数多くあります。

佐藤一郎氏はあまり知らなかったのですが、
桑沢デザイン研究所→スーパーポテト→独立という、バリバリの店舗デザイナー。
際コーポレーション、フードスコープ、BYO、スティルフーズ
などの外食企業がこぞって指名している方です。



栃木県内にありながら、宿泊はおろか見学にさえ行ってませんでした。
全くもっておろそかです。
宿泊は最低でも一人4万円。
遠出したなら、「一泊ぐらいいいかな」と思ってしまいそうですが、
ここは自宅から高速道路なしで1時間。ちょっとしたドライブの距離です。
なんともふんぎりがつきません。
そして同じ金額を払うなら老舗旅館に行きたいのが正直なトコロです。。。



結局、ばたばたしてしまい、<観季館>しか見れませんでした。
他の2館、是非ともじっくり味わいに訪れたいモンです。
ようやくこの旅のメイン、茶室について。
茶の湯。室町時代に行われていた闘茶・書院の茶から精神性を志向した珠光。そして堺にて侘び茶を追求した紹鴎。その弟子で、茶の湯を大成させた千利休。弟弟子の薮内剣仲が薮内家を起こし、利休の子孫である少庵、宗旦、宗守等により表千家、裏千家、武者小路千家が興る。さらに古田織部や小堀遠州らが大胆で自由な茶風をあみ出してゆき、、、といったあたりが歴史としての茶の湯の流れです。もちろんここに、信長、秀吉、家康らとその時代性が深く関わってきます。

僕が茶の湯というか、露地や日本庭園にうっすら興味を持ったのは大学時代。
日本建築研修で奈良京都を訪れ、桂離宮と修学院離宮に行った時でした。
建築自体はもとより、気になったのは、そこに至る行程でした。
ここで幅を狭めて視線を絞り、曲がったところで一気に開く。不安定な踏み石を気にさせつつ、いつの間にかまた森の中に。踏み石を変えたり小さい門を潜らせたりして、その先は違うエリアになるんだよ、と伝えつつ、目標の建物へ文字どおり紆余曲折しながら辿り着く。
もちろん寺社建築にもアプローチによる意識の操作は相当仕込まれていて、
伏見稲荷なんかはアプローチ自体が目的になっている、顕著なものです。
その、空間的仕掛けによる身体そして意識の操作性、なんとなくそれに気付いていながらも没入してしまっている自分に気付き、その作為の鮮やかさに気持ち良ささえ感じたことを覚えています。

さらに大学卒業設計時から大学院留学を経て今だに僕の中で研究のテーマとなっている、
「空間と身体の関係性、その種・強度がどのように意識(気持ち)へ影響されるか」
の答えが、現代建築でもギリシアの建築でもなく茶室にあるのではないかという漠然とした仮説が。
浮び上がってきたのは、留学中にクラスメイトに自分の空間に対する考え方を伝えている時。
それまでは、自分の思う真の空間とその捉え方(仮説)は人間にとって根源的なものなので、
万国共通の概念であると考えていました。
共通の概念であることは確信を得たのですが、なにかが違う。
どうやら、この感覚を得る為のプロセスが圧倒的に違うんじゃないか。と感じた時に、
日本固有の空間の関わり方・捉え方が茶室にありそうな気がしました。
茶の湯はものすごく漠然とした世界で、突き詰めれば突き詰める程、凝視すれば凝視する程、焦点をぼかされてしまう。明確な目的がある訳でもなく、フォーマットもはっきりしていない。
しかし、得も言われぬ喜びを得ることができる。なんなんだ、この世界は。
そしてそんな文化が当たり前のように生まれ、定着してる日本は。と思った訳です。

茶の湯は一見、形式ばって堅苦しい、難しいモンだと思います。でも僕の解釈では、あれは只の形式でしかなく、要はどれだけ寛げるか。どれだけ楽しめるか。そしてどれだけ主人やお客の気持ちを汲むか。が重要。それらを成立させる為に、ツールとして流れや茶道具、掛軸などがあるだけで、それらが気持ちの邪魔になったりしたら意味がないわけです。しゃべりたければしゃべればいいし、しゃべりたくなければしゃべらなければいい。結局はどれだけそこに居るお互いが気持ち良く過ごせるか、が大切。というようなことを「美味しんぼ」でノ貫先生が言ってた気がします。

さて茶室です。実に様々なタイプがあります。

  <西芳寺(苔寺)湘南亭>  <同、潭北亭>

    <大徳寺高桐院>    <高台寺遺芳庵>

  <高台寺時雨亭>    <高台寺傘亭>   <大徳寺高桐院松向軒>
天井の高いもの、2階にあるもの、暗いもの、明るいもの、すごく狭いもの。
平面的にも、給仕口や床の間、炉、躙口などといった要素があったりなかったり。
見れば見る程、ぼかされていきます。
これらを見て廻り、裏千家会館などでお茶を頂きながらお話を聞いている内に
薄目で見えてきたことがあります。
それを最後の2室で書いてみようと思います。

  <南禅寺金地院八窓席>    <妙喜庵待庵>
八窓席・・・3帖台目、大きな窓、主人-炉-お客の位置関係 等々。
      明るく自由、ざっくばらんな雰囲気。
待庵・・・・2帖、小さい下地窓が3つ、炉-主人-お客の位置関係 等々。
      狭く暗い。2人だけの緊張感。
細かくあげれば要素の違いはキリがないのですが、
明らかなのは、この2室に居る人達の関係は全く別種だろうな、ということです。
八窓席は数名でわいわいと楽しそう。待庵は2人でじっくりできそう。
主人とお客の元々の関係にもよるので、どちらが良いとは言えないのですが、
要は2者がどのような関係を築きたいか、に尽きると思います。
その為に露地があり、茶室があり、茶道具があり、掛軸があり、所作があり、お茶がある。
それらがひとつの方向に向って「空気」を創り出す。
茶室に関していえば、幅/奥行/天井高さと向き/床の間とその位置/窓による光の調節/炉の位置/給仕口の位置・大きさ/素材と、空間を構成する要素は多岐に渡りますが、
その全てが「築きたい2者の関係性」という目的に向っているんです。
なるほど。「関係性」「空気」か。見ようとしても見えないはずです。
でもその、「空気をかもし出し」「空気を察する」という能力は日本人の特殊な能力のはず。
そこに少なからず関われる、空間づくりというのはやっぱ面白いです。
リノベーション事例見学です。
TOKI-WA-SOHという、かつて遊廓だった築年大正時代の建物をクリエイター向けのSOHOにリノベーションさせたものです。
出会いは出発直前に発売されたカーサ・ブルータス。
その強烈過ぎるといっていいほどの個性に惹かれ、見学希望の申し込みをしてしまいました。
数年後に迫った自分のシェアオフィス立ち上げの為、現在進行中のリノベーションプロジェクトの為、単純にオーナー岩田氏への個人的興味の為、様々な目的と純粋な好奇心を持って訪れました。

    <正面外観>           <裏側オフィス入口>
立地は、繁華街である四条河原町から鴨川を少々下った辺り。この辺は喧噪から離れ落着いたエリアではあるんですが、高層マンションなんかも建ち始めているなかに昔の歓楽街の面影も若干残しつつ、といったように、バランスが崩れ始めているエリアです。その路地にあります。
外観は正面が丸窓にタイル張りと、洋風。玄関先のモザイクタイルの色合いが娯楽感アリです。
裏側が日本家屋。紅柄格子と枯れた土間が素敵です。ここはオフィス専用の入口ですが。

   <応接室の床の間>    <応接室から坪庭を>    <CAFEスペース>
まず案内されたのがこの部屋。応接室です。
いやいやいやいや、すごい。。。
李朝家具に金箔貼りの床の間。落し掛は黒塗+金塗。隣の床の間は紅色。床柱はトルネード。
ここは有料の共用スペース。1人でも、シェア仲間とでも、悪企みができそうです。
岩田氏のお話では、京の「侘び寂び」というよりも「バサラ」な感じに共感を覚える、とのこと。
だから利休よりも秀吉の聚楽第のイメージがむしろ落着くということでした。
分かる気がします。
利休は当時は最前衛の芸術家。秀吉はいち農民上がりの俗人。
その秀吉が好んだ「バサラ」感。
俗世的な欲とか体裁とかを脱ぎ去ってこそ、真の人と人との関係性ができる、という利休。
いやいや、四六時中「真」に迫っていたら疲れるっしょ。欲とか体裁に素直に従った方が気持ち良いじゃん、という秀吉。
確かに秀吉の考え方の方が、日常を生きていく中では楽な考え方です。

右は共用のカフェ。いやらしい感じですが、これは落着く。

   <講議所建具>      <講議所>     <入口タイル>
オフィス脇の箱階段(まずこれを持っていて、置く場所というか、相応しい空間が欲しかったのでこの物件をつくったらしい)を上ると講議所が。幕末の寺子屋みたいな感じ。実際に、政経塾のようなこともされているとか。隣にはシャワールームもあります。

   <トイレ手洗>     <新規丸窓>    <既存丸窓>
この手洗器、テレビのブラウン管の再利用です。
左の丸窓はカフェ部分。新規に設置。枠がモザイクタイルになっていて、反射感も堪りません。
右の丸窓は大正時のもの。モダン。

<オフィス廊下>      <オフィステナント例>
木の良いツヤのある階段を上り、6部屋あるオフィステナント部分へ。
廊下もなんとも渋い。
各扉を開けると、右のようなテナントスペースが。
無垢板の床に白壁のシンプルなオフィスです。
共用部分からすると拍子抜けのような気もしますが、ここの雰囲気は入居者にお任せということでしょう。家具、照明、壁の色などお好みに変えてしまえば良い訳です。

これらの造作、実はほぼ岩田氏が自らやったそうです。
家具や建具や照明はもちろん、金壁の床の間や水廻り、丸窓のガラス、坪庭の灯籠、トイレの新聞紙などは全て岩田氏がもともと持っていた物。
しかし氏はデザイナーではなく骨董屋さん。よくぞここまで。いや、デザイナーじゃないからこそここまで出来たんだろうと思います。
デザイナーの欲ではなく、個人的趣向の欲。これはある意味すがすがしい類のエゴです。

ここがどんな方々に借りられ、その方々がどのようにここで過ごし、仕事の質が変わっていき、どのような自然発生での絡みを見せてくれるか、非常に楽しみです。
僕の中でのリノベーション手法としては、振れ幅のかなり振り切った例です。

こういう方から見て、METで紹介しているような物件はどう見えるのだろうと思い、掲載雑誌を見てもらいました。
感想は「こんなもんしかないんだ、寂しいもんだ。」
京都の方にとっては、築80-100年物件は当たり前。その中から良い悪いの判断となります。
古いから悪いということもなく、逆に古いから凄い、ということもない。それはそれでいち物件。
ヨーロッパの都市もそうですが、常識のラインが栃木とは大きく違います。
少なくとも共通しているのは、物件自体の価値(資産価値)うんぬんよりも、
「それをいかに使うか」という利用価値や居住価値が最も重要視されている点です。
この点でならいち地方都市でも太刀打ちできる土俵だと実感しました。
今回は泊まった宿について。

胡乱座(うろんざ)といいます。
1898年築の町家をまじめに改装(補修)した宿です。
魅力はなんといっても「町家に泊れる」に尽きます。
しかし部屋は相部屋。知らない人と布団を並べて眠るのです。
幸い、当日は僕も含めて2人しかいなかったので、6帖間は一人占めでしたが。
もう1人は結局顔も見ず。
でも誰かが相部屋でも、それはそれで許せる感じでした。
なんせ宿代は2000円台。
でもお風呂もトイレも洗面ももちろん共同ですが、きれいなモンを使ってるし、
なによりも坪庭脇の喫煙所でのタバコ時間が幸せでした。

通り土間    火袋(高さ7M!)    坪庭

俗に言う「うなぎの寝床」。間口が狭く、奥行きが非常に長い。
玄関を潜り、通り土間(外)を抜け、奥の棟に宿泊部屋があります。
お風呂、トイレ、洗面は通り土間沿い。
つまり、寒いんです。京都の冬は寒い。
しかし京都の夏は、盆地の夏。かなりキツい。
だから町家は夏をいかに涼しく過ごすか、を重視しています。
結果、坪庭を中心に生活が営まれます(ある種排他的な気性もここに由来するのかも)。
坪庭と火袋がつながり熱の抜け道となり、風が抜けます。
しかし冬も同様に熱が抜けるのですが。。。
寒さはともかく、坪庭を囲んだ生活スタイル、空間の細長さ(上にも奥にも)が
妙に身体にフィットするのです。
いい感じのスケール感、親密感。そして圧迫感。
それらが不思議な落着きをくれます。

1泊しかしませんでしたが、次回はオフシーズンでない時期に来て、
宿泊客同士がどのようにここで過ごすか、を体験してみたいです。

しかし、町家の写真はどうしてもタテになりますね。
京都一人旅報告です。
目的は茶室巡りを中心に茶の研究とリノベーション事例体験。
何回かに分けて書いていきます。

1864年生れの日本画家、竹内栖凰の東山私邸が、
レストラン「The Garden Oriental」として生まれ変わりました。

手掛けたのは東京にある会社。業務内容はホテル・レストラン・ウエディング・コンサル等々、精力的な会社です。レストランに関しては、東京・京都・神戸・福岡と大都市だけに留まらず長野・徳島にまで展開しています。基本は歴史/由緒ある建物のリノベーション。徳島では工場跡だそうです。

平日のカフェタイムに行ったせいか他のお客はほぼ居ず、貸切り状態でした。
僕はこの中庭に面した格子窓脇のテーブルへ付き、チョコ系のデザートとコーヒーを。

なんていうか、とてもいい。。。なんだろう。
空間と味とサービスとか、とても一体感があるというか。
どっしり感と適度な湿り気、ツヤ、歪み、におい、柔らかさ、流れ、暗さ、、、
そういった要素が全てひとつの方へ向っている感じ。
うまく言えないが、とても質のよい「居心地が良さ」を久々に味わいました。
決して高飛車でも背伸びでもなく、本質的に落着きがある空気感です。

しかし、いいなぁ〜。という素直な感想と
こういった空間がきちんと成立していることの励みと同時に、
悔しさが僕の中では大きかったのが正直なトコロです。
栃木にこういった物件がない悔しさなのか、
こういった感覚を30過ぎても久しぶりにしか味わえない悔しさなのか。
間違いないのは、ここまでの質と一体感をもつ空間創りに今だ携れないもどかしさ。
京都とは空気の流れが違うから、全く同じモノはできないし、求めない。
でも材料は違えど、栃木で同じ質と一体感のレベルに達することは可能です。
店舗でなくても、住宅でもオフィスでもOK。

マネージャーの方にお願いし、邸内くまなく案内して頂きました。
僕の居たのはバースペースで、別にダイニング、パーティールーム、個室等々。広い!
又東京の会社ということで、ある種排他的な京都で、しかも祇園エリアでやっていくのに問題はないのか尋ねたところ、新築ではなく近隣の方々も気にしていた「由緒ある廃虚」を活かしたこと、会合には必ず参加していることでうまく付き合っていけてるとのこと。この姿勢は素晴らしいと思いました。
使用している敷地内だけではなく、近隣も含めて価値を見い出し、そこへも労力を惜しまないこと。
極端にいうと地域の文化を貪り喰うとも言える、チェーン店にはない考えだと思います。
それが出来たことで周辺のステイタス(地価とも言えますが)を上げていく意識がないと。

こうみると、この建物は侘びとかさびとかではなく、
「艶」「艶やかさ」「色気」(同じ意味ですが)を持っています。
削ぎ落したミニマルでストイックな美しさって確かにあるのかも知れませんが、
人間それでは退屈。疲れてしまいます。
実は遊び心や欲望を「ちょいと出す」そして「煙に巻く」そんな所作にこそ
日本人は親近感や色気、美しさを感じるのかもしれません。
「くすぐられる」とか「ぐっとくる」とか。
一番大切にしたい感覚です。
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